早く退院できる環境を      

42.早く退院できる環境を 

        
 膳所あかねさん(仮称)は、現在グループホームに入っていますが、最近盲腸癌の手術をうけました。今回は、侵襲的検査を実施することの判断の難しさと、術後の回復がグループホームという生活の場で行うことによって著しくすすんだというお話です。
 膳所さんとはじめてあったのはずいぶん前になります。統合失調症を発病した全盲の息子さんをつれて救急外来にこられた20年ほど前が最初です。「こんな息子をもって」と愚痴をこぼしていたのが印象的でした。10年前に膳所さんが通院困難となり当院から訪問診察に行くようになりました。そのころは、シロアリが体について困るといった体感幻覚様の症状がありました。そして8年半前に現在のグループホームに入られました。そこからは職員に連れられて外来通院になりました。自分で作ったパイプを切ったようなものを杖にして歩いており、幻覚も全くなくなり別人のように元気でした(グループホームでの生活が良かったのだろうと思いました)。

 その膳所さんは、20X-2年6月3日に下血があり、S字結腸ファイバーでAV50cmより口側より出血が降りてきているとのことでした。さらなる精査は大腸ファイバーが必要でしたが、グルーホームの職員とも相談した結果、とても下剤2リットルは飲めないだろうしかつ拒否するだろうから検査は困難と判断しそのままフォローとなっていました。貧血が徐々に進行し20X-2年12月25日では血色素6.8でした。フェリチンも低くフェロミア処方していたところ20X-1年6月までに11.7g/dlまで改善していました。何となくそれで安心していて問題が未解決なことの意識が消えてしまっていました。ところが、20X0年3月2日頃より食事摂取量の低下あり、3月6日に38.3度の発熱、7日に往診し診察所見で腹部圧痛もなく、とりあえず補液をしました。8,9日と発熱がつづき、おなかを触ったところ鼓腸と左下腹部の圧痛があり、急遽、画像診断(CTとUS)をした所、下部小腸イレウス、虫垂または大腸癌の穿孔による回盲部腫瘤と考えられ緊急入院となりました。盲腸癌、膿瘍形成、腸閉塞、肝・肺転移と診断され右半結腸切除を受けました。術後、私が回診に行くと丸まって臥床しており、両膝関節も屈曲拘縮気味でかつ食事摂取も不十分でした。このまま入院していることはかえって不利だと考え退院していただきました。退院翌日に往診するとかなりの高張性脱水(ナトリウム159)になっており補液を連日つづけラコールものんでいただき、職員がつきっきりで食べさせていると徐々に改善し座れるようになり、食事もとれるようになりました。なじみの職員が、生活の場で24時間対応できる環境でマンパワーをそそぐことが、認知症高齢者の機能回復には何より大切と感じました。退院後に短期集中的にケアが提供されることが、退院をスムーズにさせると同時に高齢者の機能回復にも必要だろうと思いました。


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