6.鍵がかかっている場合 (2014年10月1日)
訪問診察にお伺いしている中で、患者さんが日中一人でいるお宅が何軒かあります。その場合、無論一人暮らしのお宅が多いのですが、家族同居でも家族が日中不在のこともよくあります。
息子さんと二人暮らしで完全に寝たきりのAさん宅には、月一回の訪問診察にいっています。訪問診察日はあらかじ め書面で毎月お知らせしていたのですが、手違いでお知らせがいっていないことがあり、訪問診察に行くと息子さんが出かけてしまっていて、玄関には鍵がか かっており中に入れないことがありました。患者さんが電話に出られそうなときは玄関先で電話して鍵をあけてもらったりすることもあるのですが、Aさんは全 くの寝たきりでそういう手も使えずどうしたものかと思案して、とにかく玄関以外で入れることがないかと、狭い軒先を横から回りどこか入れるところがないか 探したところたまたま勝手口があいておりそこから入ったことがあります。勝手にはいるから勝手口なのかとか、同様のことがその後もう一回ありその時は勝手 知ったる勝手口とだじゃれを思い浮かべながら入ったものでした。その2回目などは雨も降っており地面がぐしゃぐしゃで診察が終わって走って表に出たら通行 人とばったり出会い、白衣を着ていなかったら泥棒と間違われたかもしれないなあと思っていたら、同行の看護師も同様のことを思っていたらしく顔を見合わせ てと複雑な笑みを浮かべました。
息子さん一家と同居のBさんも、家人が外出していると鍵がかかっていて入れないことがありました。その時はいつ もは別のお宅に先に行って時間調整をしてまた戻ってくることにしてなんとか訪問診察に支障がありませんでした。しかしあるとき最初にお伺いして鍵がかかっ ており、上記のごとく時間調整して戻ってきても家人がまだ帰っておらず鍵がかかったことがありました。クリニックより比較的遠方地でこのお宅が最期なので どうしたものかと思案していたが意を決して、お家の周りをぐるっと回りどこかあいているところがないかと探したらたまたま本人の部屋の窓の鍵がかかってい なかったのでそこから入ったこともありました。
進行胃癌と認知症のCさんは、一人暮らしで玄関には鍵がかかっています。それで鍵をあらかじめお預かりしてその鍵で玄関を開けて訪問しています。カルテにひもで鍵をつけています。このように鍵をお預かりして訪問診察に言っているお宅もいままでで3軒ありました。
このように訪問診察時に家人がいない場合は、病状について家人に伝える伝言用紙をつくっています。それに本日の診察結果、前回の検査結果、今後の計画などを記入して知らせています。
今後独居の高齢者が増えたり、同居する家族も仕事があったりして、上記のような鍵がかかったお宅ということもふえそうだが、この裏には在宅介護力の低下という(介護保険ではカバーできない)大きな問題のあらわれのひとつに過ぎないことも感じます。