7.孫のいる風景 (2014.11.10)
現在訪問診察に行っているお宅で、訪問診察時にお孫さんが顔を出す家はほんとに少ない印象です。少し調べてみ たら現在140件ほど訪問診察に行っていますが、3世代同居のお宅は18件で、うちお孫さんが訪問診察時に顔を出すお宅は4件ほどでした。つまりお孫さん はいても顔を出さないのではなく、もともといない家がほとんどなのです。
Aさんは、Aさんの母親にも訪問診察にいっていましたが、その頃は最近の家族構成ではめずらしい4世代同居でし た。Aさんの母親、Aさん夫婦、Aさんの息子さん夫婦とその子どもさん(Aさんにとってはお孫さん)の4世代でした。Aさんの母親が亡くなり現在は3世代 です。今はAさんがパーキンソン症候群で歩行不能となり通院困難になったため訪問診察に行っています。Aんの母親に訪問診察に行きだした頃にちょうど3番 目の内孫が生まれました。その孫も今は5歳です。訪問診察に行くと、ドドッと孫たちがAさんの部屋に駆けつけてきます。Aさ んもうれしそうにニコニコ顔になります。このとき、孫に柱を垂直にのぼり、天井に到達すると、天井を逆さに歩き最後にまた降りてくることをしてもらってい ます。といって彼らは忍者ではないので、私が持ち上げてやっています。実施する側の腰にあまり負担がかからないように小学生までという年齢制限もしていま す。その天井歩きを孫はとても喜び、孫に喜ばれると、わたしもとっても気分よくなります。そういうわけで、訪問診察にいくたびにドドッと期待いっぱいの顔 をして孫たちがよってくることになっているわけです。それをみてAさんもAさんの奥さんも、Aさんのお嫁さんも、そして私たちもみんなニコニコ顔になりま す。また車椅子に乗ったAさんをモデルに孫のひとりが絵を描いて学校で賞をもらったとかでAさんの部屋にその絵が飾ってあります。こういうことは自宅での 療養でしか見られない光景ですし、その点、Aさんの満足度も高いものになっていると思われます。孫の一番最年長は中学校1年生です。医師不足の時代、その 孫に「将来お医者さんになってね」と期待を込めていうと照れくさそうだがまんざらでもない顔をしていています。その後猛勉強したのか、いつの間にか眼鏡を かけるようになっていました。
2008年3月に国立社会保障・人口問題研究所が2005-2030年の日本の世帯数の将来推計を公表しまし た。世帯主が75歳以上の後期高齢世帯が2005年の554万世帯から2030年に1110万世帯に増加すること、単独世帯は2030年に後期高齢者世帯 の約4割になるというふうに予測されていました。また平均世帯人員は2030年には2.27人と推定されています。単独世帯やせいぜい1-2世代同居世帯 がほとんどで、上記のような光景はますます見られなくなっていくことはまちがいありません。