みなし末期

2.みなし末期 (2014年7月3日)

パーキンソン病と認知症のIさんに訪問診察にお伺いしています。Iさんは、小脳梗塞・頚髄症で要介護2の夫との 二人暮らしです。息子さん2人は2人とも東京に所帯を持って生活しています。金沢に帰ってこられてもIさん宅には泊まらずホテルに泊まっているんだとIさ んの夫が寂しそうに話していた頃もありました。Iさんは2006年10月に発熱と食欲低下があり、3日ほど点滴するも改善せず入院していただいたことがあ ります。夫に「Iさんがあぶない」からと言われて息子さんが駆けつけてきたのですが(よく危ないからといって電話することが時々あるようです)、入院先の 受け持ち医が息子さんに、病状を説明し口から食べることが出来ないので経管でと話しをしたところ、そういう治療はいらないからといって自宅に連れ帰りまし た。高齢者の場合、一生懸命食べさせてもどうにも食べられず、原因としてはっきりしたものがないときに家族との話し合いの後にそのままで様子を見ることが あるのも事実です。Iさんもそういう状況かとも考え私もそれに同意したのでした。しかしその後、本当に食べれないのだろうか、パーキンソン病の薬が十分 いっていないことが原因としてあるのではないかと悶々と考えとにかく経管から薬だけでも入れようと判断して実行しました。息子さんがそれをみて意味がない と侃々諤々の話し合い(にらみ合ったこともあった)を 1.5時間ほどして納得はしてもらえなませんでしたが、拒否もなかったのでそのまま抗パーキンソン剤の投薬を経管から続けたところ、食事が取れるようにな り最終的にしゃべれるし座ってもおれるようになりました。高齢者のターミナルの判断はとても難しいものがあります。夫は自宅の前にあるお寺に行って早々と Iさんの戒名をもらってきていました。後で笑いながら、「戒名料」はいくらで、自分もついでに戒名をもらったなどと話されていました。


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