行動障害の背景

1. 行動障害の背景 (2014年6月2日)

Aさんはグループホームにおられ、そこに訪問診察に行っています。○ユニットのグループホームです。その一階の ○○の間にAさんは住んでおられます。Aさんは数年前に私の外来にこられ、以後は年に一回同居のお嫁さんが主治医意見書記載の時にこられて様子をうかがっ ていました。ショートスティ中の特養で、他の居室の高齢女性のおむつを下げ陰部をだしたということで、県立の精神病院に入院したことまではきいたいました が以後の音信は不通でした。グループホームに入られたときに往診依頼があって再会したわけです。むろん訪問診察にいっても私のことはわからないようでし た。

この方のことが特に印象深いのは以下の理由からです。私は職員などに認知症の話をする機会があるのですが、その 時に「認知症の方の行動障害の背景は了解可能である」という原則?を説明します。その説明の具体例としてAさんをあげさせてもらっていたからです。日中お 嫁さんと二人で居たときに、ズボンを下げて陰部を露出させたという行動障害があったのですが、お嫁さんが外来に来たときにたまたま診察の最期だったので ゆっくり話を聞いたところ、何となく二人してそうだったのかと合点したことがありました。それはAさんの奥さんが潔癖な方で、テレビのキスシーンが出ると テレビを消してしまう、奥さんが肺結核になり夫婦生活をさけたことなどにたいする積もり積もった欲求不満が出ているのかねえという話でした。お嫁さんもそ んな話になってきて「おじいちゃんの行動いやだけどおじいちゃんもかわいそうだったのね、少しは我慢できそう」と話されました。それが本当の背景かどうか はわかりませんが、あれこれAさんのことを考えてあげるという気持ちが大事だということは間違いないと思っています。

 


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