35.もうしょうがない、猛暑 エアコン 2010年9月
この記事が載っているときは9月半ばで残暑もなくなった頃でしょうが、猛暑の中で書いています。今年の夏は異常な暑さでした。患者さんの診察時は、開口一番「暑い日が続きますね。ばててませんか?食欲は大丈夫ですか?」と決まり文句のように聞きます。
日陰ではないところに駐車した車に訪問診察を終えて乗り込むときの暑さと、エアコンのないお宅に訪問するときの暑さがこたえます。太陽で暑くなった車に乗り込むと、エアコンを目一杯作動させます。次のお宅につく頃になってようやくひとごこちがつきますがおりるとまた「アジジ」です。到着時には日陰がないかと探しそこに車を止めるようにしていますが案外と日陰は少ないもので炎天下に駐車することになります。
エアコンがあるのに使っていない本山かどきさん(仮称)のお宅に訪問すると、室内は外とほぼ同じ気温です。エアコンのきいた往診車から降りて部屋に入るとじわっと汗がにじんできます。患者さんも額に汗を浮かべています。エアコンのリモコンに手が伸びそうになりますが、寒いと体の調子が悪いのでエアコンを入れていないといわれそのままです。寒くなるほどエアコンをきかさなくても少し涼しい程度にすればどうかと思いますが、自分の部屋はおろか、家人のいる居間までもエアコンを入れさせません。お嫁さんも半分怒り半分あきれ顔です。食欲は落ちていず、水分もとっているというので様子を見ることになります。
エアコンのない吉山絵美さん(仮称)宅に訪問すると、家人は窓や、玄関、そして裏の戸をすべて開け放っています。少しでも風通しをよくして涼しくしようということなのですが、部屋にある寒暖計をみると35℃をさしています。暑いなと感じていたのが、35℃という数字をみると余計に暑く感じてしまいます。息子さんは短パンで上半身裸です。西洋医学の薬は体に毒だと強く信じていて、部屋には、サプリメントや自然食品が一杯散乱しています。暑さも自然にしのぐという考えのようです。この信念を変えるには、さらに熱く議論が必要でこれ以上暑いのは堪忍してほしいと思い、そのままです。幸い吉山さんは熱中症にも食欲低下にもなっていません。
自宅でのエアコン保有について調査してみました。自宅にお伺いしている方は106人です。うちエアコンなしが15人で、あるのに使っていない方が2人、エアコンを使用している方は89人でした。
生活保護の方は、以前はエアコンをもっていると、はずせなどとひどい指導もあったのですが現在は自分で購入する分にはエアコンの所有はOKだそうです。とはいっても全員が持っているわけではなくエアコンのない方は12人中4人(33.3%)でした。生活保護でない方でエアコンのない方は11.7%(2004年石川県のエアコン普及率は約90%)です。生活保護の方は3人に1人はエアコンがありません。猛暑の中で、堪え忍んでいる患者さんの汗に光る顔が目に浮かびます。猛暑は「もうしょうがない」にしても、エアコンは必需品ですよね。