同居者は独身の息子さん

33.同居者は独身の息子さん                   

 当院から訪問診察に行っている患者さんで自宅におられる方は、以前より少なくなっており、その一方いわゆる居住系施設に住んでおられる方が増えています。当院では、訪問看護と訪問介護も行っていますが両者とも訪問件数が大幅に減少しています。その理由を検討すると在宅での家族による介護力が低下しているためと思われました。自宅で介護される要介護度の高い方が極端に少なくなったり、また新規の依頼があっても要介護度が重くなるとすぐ施設入所になったりするためでした。一度、自宅での介護状況を調べたことがあります。1998年には老老介護が約33%、嫁が約33%、独居が約12%、息子は0%でした。2006年にはそれらが28%。22%、35%、8%になっていました。年度毎のばらつきはありますが,独居がかなり増えていることと主介護者が息子(基本的に独身)である場合が増えていました。今回は、主介護者が独身の息子である方のお話です。

 大山佐知子さん(仮名)は独身の息子さんと2人暮らしです。大山さんは、アルツハイマー型認知症のかたで長谷川式は8点でした。おうちの中はゴミ屋敷とまではいきませんが、足の踏み場もない状態でした。その状態は大山さん自身のせいかと思っていたのですが、ケア会議でのヘルパーさんからの情報で息子さんが張本人ということが分かりました。ヘルパーさんの話では息子さんがいろんなものを通販でかっているとのことでした。大山さんは、スーパーマーケットに出かけていって挙動不審者ということで警察に通報されたり、外出して迷子になったり(これを徘徊と呼ぶ人もいる)することがあり、自宅での生活は困難かなと思われました。息子さんは介護者としては全く当てになりません。それでグループホーム入居も申し込みをしていました。順番がきたという連絡がありその旨をケアマネが息子さんに伝えました。グループホームの入居費用は大山さんの年金でまかなえますが、フリーターの低収入で通販での買い物がすきな息子さんは、大山さんの年金が入居費用になると困るということで入居が断られました。ましてや不況の時代、息子さんのフリーターの仕事も不確実になりいよいよパラサイト状態になっています。

 幸い、大山さんはその後は外出行動(徘徊とは言わない)もなく、落ち着いて暮らせているのでグループホーム入居の話は切実にはなっていません。同居しているのなら介護の面でプラスになってほしいのが、逆にマイナスになっています。このような例はほかにもあります。業界用語で言えば「経済的虐待」になるのでしょうか。

 今後も独居高齢者と単身の子供が主介護者である場合が増えていくことが予測されています。パラサイトしなくても経済的自立ができる雇用状況になり、かつ家族がいなくても在宅で必要十分な介護が受けられる介護保険制度にならないときびしいなと思いました。

 


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