訪問診察と写真

14.訪問診察と写真             (2008.12)

訪問診察に行っている方の写真を誕生月に毎年撮ることにしています。それがどういうときに役立つかのお話です。訪問診察に行っている方が、入院せざるを得なくなったときは当然、連携先に診療情報提供をします。診療情報提供書は一般的に、疾患の経過や処方内容、今回の入院目的などが記載されます。無論それらは必要な情報には違いありませんが、在宅患者さんの場合、一定の障害を持ちながら生活されているので、その生活の状況が把握されていると退院時のイメージを入院主治医が持ちやすくなります。たとえば、急性疾患の治療がある程度終わった時に、歩けない状態になっていたとしてもそれが元々なのか今回そうなったのかでは随分違います。それで私たちは、診療情報とは別に、簡易アセスメントと称して、ADL・IADLの情報に加えて、認知症の有無や程度、うつ、意欲などを評価した用紙を作成し入院主治医におくっています。それで自己満足していたのですが、紙に書かれたいろんな項目をみても、何かぴんと来ない感じが自分自身していました。その時に、誕生月にとっている普段の写真を見せると,一遍に在宅での生活の様子がわかることに気づきました。まさに百聞は一見にしかずです。誕生月の写真は、3枚からなります。ひとつは、住んでいる部屋の様子がわかるような構図で本人も写っているものです。ふたつめは、歩いている人は歩いているところ、立てる人は立っている姿、座れる人は座っている姿を全身が入るように撮ります。そしてみっつめは顔のアップ写真です。これらの写真を、簡易アセスメントの用紙とともに送っています。自宅での生活のイメージが入院主治医に少しでもわかってもらえているものと思っていますが、いずれは動画にしてもと考えています。役立つことの一つ目です。

撮った写真はきちんとプリントして、誕生日記念ですといって次回の訪問診察時に渡していますが、患者さんにはとても喜ばれます。一生懸命患者さんのことを考えていますよと言うメッセージの一つになっているのかもしれません。これが二つ目。

在宅に療養されている方は、どこかに出かけるとか、何かの会に出ることなどはほとんどありません。つまり記念写真を撮る機会がきわめて少ないと言うことです。近影は殆ど無いのが実状です。患者さんが亡くなられたときに,若いときの写真しかない場合があり、私たちが撮った写真が遺影になっていることがあります。お悔やみにいくと、先生にとってもらった写真がいい写真だったので遺影にしましたと遺族から感謝されたことがあります。これが三つ目。

自分自身の写真を経年的に見ていると、あの頃は髪の毛が黒かったなあと感慨深く思うことがありますが、患者さんも経年的に写真を撮っているとその変化がよくわかります。その変化に患者さんのがんばりを感じます。これが四つ目。

四つも役に立つ、誕生日の記念写真のお話でした。


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