母の愛と介護技術

11.母の愛と介護技術(2015.5.07)

2分脊椎で両下肢が麻痺し、また神経因性膀胱も伴っている河崎真智子さん(仮名)は、 車椅子への移乗は全介助です。移乗など日常生活の介助はすべて母親が行っており、神経因性膀胱に対する間欠導尿も母親が行っています。河崎真智子さんは4 人兄弟の末っ子で、障害を持って生まれてきたこともあって母親は他人の私たちからみてとても応えてあげられないような河崎真智子さんの要望に応えてあげて います。

河崎真智子さんの部屋にはUFOキャッチャーでとったぬいぐるみがたくさんありますが、母親は笑いながら莫大な投資をしたと話されていました。そ のUFOキャッチャーは、深夜営業をしているバイバスレジャーランドというところにあります。河崎真智子さんが夜中にいくといえば母親がベッドから車椅子 に乗せて車の所に行き、その車に乗せてそこまでつれていき、ついたらまた車椅子に移乗し、UFOキャッチャーに投資するという感じです。莫大な投資をした ということは何度も何度も行ったということです。

文章で書くと簡単なようですが実はこれが大変なのです。河崎真智子さんが一時期私たちの所のデイケア(介護保険制度が始まる前で老人デイケアといわれていた)に参加していたことがありました。河崎真智子さんは30代でしたから老人デイケアの対象ではなかったのですが、障害者がいけるところがないのでなんとかしてほしいというお母さんの要望があり、引き受けていたことがありました。河崎真智子さんはとても肥満でうちのデイケアの屈強な男性職員(介護福祉士ではなく介護力士士というネーミングを三好春樹はしている)も移乗の介助に悲鳴を上げるほどでした。そのことを聞いて、河崎真智子さんを毎日毎日、時に夜中でも車椅子に移乗させてあちこち連れて行く母親の姿を思い浮かべると、母の愛というものを深く感ずるのでした。

もう一つ感じたのは介護技術のすばらしさです。母親が実際に河崎真智子さんを移乗させるところをみる機会があったのですが、無理なくスムーズに移乗させていました。うーんと力をいれてやっているというより、スースーとやっている感じで驚きました。腕の立つ職人さんが作業をしていると力が入らず、スムーズにそして楽そうにしているように見えるものですが、母親の移乗動作をみてそう感じました。最近「古武術で学ぶ介護」だとか、「腰の負担を軽くするスーパーテクニック」といった介護技術の方法が喧伝されています。それはそれで重要のことなのですが、相手は物体ではないので対象者の力や動きを熟知してまた安心感を与えての介護が必要であるとも言われています。その点で母親の河崎真智子さんへの介護技術は対象者を知り尽くしていればこその介助であるなあと感心した次第です。


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