医療費が払えない

3. 医療費が払えない(2014年7月11日)

訪問診察に関わる医療費自己負担分の支払いは、銀行振り込みであったり、家族によるクリニックの窓口での支払いであったりですが、訪問診察時に 請求書をわたしその場で集金してくることもあります。Tさん夫婦(Tさんは94歳で非代償性肝硬変、妻は心不全)に訪問診察にいっていますが、私が受け持ちになってからその請求書がカルテに入っていたことがありません。家族が支払いにきているわけでも、銀行振り込みでもありません。息子さんにいっても全く支払う気はなく、請求書がたまる一方で請求書の束が分厚くなってカルテに挟むことも出来なくなったためにカルテにいれなくなったと事務は説明?!。 ○○ 年の1月の訪問診察時にTさんは、今年の正月は餅も買えず何の準備も出来ず迎えたといって嘆いていました。訪問診察時には、主訴「金がない」とカルテに書 きたくなるほど何度も「金がない」とTさんは言います。本当に金がないようで食べるものにも事欠く始末のようでした。処方箋に100万円/1とでも書いてしまおうかと冗談に思ったくらいです。

お二人は、医療を続けないと病状がすぐ悪化します。この間も何度か入退院を繰り返しています。そのことで心配になったことがあります。もし後期高齢者医療制度が実施されると二人は確実に保険料滞納となり、すると資格証明書発行の事態になることは間違いありません(現在の制度では75歳以上の方に 資格証明書が発行されることはありません)。資格証明書だと、一時的にせよ医療費の全額を支払うことが求められますが、Tさんには出来ません。そうすると、医療機関が無料で診療をつづけるか、または医療が受けられなくなるかのどちらかになります。もし後者なら命にかかわることになることは間違いなく、後期高齢者医療制度にゾクッとしたものを感じました。

(注:このTさんの状況の背景については、生活保護の問題や、経済的虐待の問題もあるのですが、現実がそうだということでその点にはふれませんでした)


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