在宅での急死(2)

23.在宅での急死(2)

 山田太郎さん(仮名)は57歳と私たちが訪問診察に行っている方の中では若い方でした。多発性脳梗塞で屋内レベルでした。47歳の時には脳梗塞による障害のために仕事ができなくなり妻がパートの仕事をしながら家を支え、かつ夫の世話をしてきたのでした。最初のころは通院していたのですが徐々に歩行障害が悪化して通院困難になり訪問診察になっていました。午前の診療が一段落したときです。奥さんから、「夫が風呂に浮かんでいる」と慌てた声で電話がかかってきました。「救急車を呼んだらいいか」と聞かれたので、私たちがすぐ駆けつけた方が早い距離だったので「すぐいく」と返事して車で駆けつけました。到着して風呂場をのぞくと、お湯が抜かれた浴槽の中で山田さんはうなだれるように座っていました。看護師と二人してどうにか浴槽からあげると口腔内からお湯が大量に出てきました。心肺は停止しており、瞳孔も開いておりそのまま死亡確認しました。溺水と思われました。なぜそうなったかを頭の中で、めまぐるしく考えました。脳梗塞が再発し、意識レベル低下が低下してお湯の中に顔を突っ込んだのだろうか?、心筋梗塞をおこして意識レベル低下したのだろうか?、くも膜下出血をおこして意識消失したのだろうか?、立ち上がろうとして転倒して脳震盪をおこしたのだろうか?などとあれこれ考えましたが外表所見からはどれとも決められません。警察に連絡してから、あいた部屋に遺体を移しそこで検案しました。後頭下穿刺で髄液採取しましたが血清ではありませんでした。くも膜下出血や脳出血後の2次性くも膜下出血ではないとはいえますが原因ははっきりしません。無論犯罪によるものではないので最終的に検案書として溺水と記載しました。突然の死に、妻も、駆けつけた娘さんも呆然としながら涙を流しています。朝風呂に入ると言って風呂に入れた後、妻は家の回りの掃除をしていたようで、もし家の中におれば早く見つけることができたかもしれないと悔いておられました。妻に向かって、「心臓か脳に重大なことがおきたと思われるので、致し方なかったと思います。悔いることはありません。むしろ長い間、仕事をしながら夫を支え介護してきて本当にご苦労さまでした」と話しました。

 外来にかかっている患者さんで、ぽっくり逝きたいとおっしゃる方は結構おられます。

そう言われたら、「○○さん、ぽっくり逝くと家族は腰を抜かさんばかりに驚くし、警察を呼ばなければならないこともあり大変だよ。寿命一杯生きて数日寝込んだと思ったら、家族に見守られながらありがとうといって死んでいくのがいいよ。そのためにも寿命一杯生きないとそんなことにはならないから血圧のコントロールしっかりしようね」といっています。わたし自身そうなったらいいなと思いつつ,現実は厳しいなと半分あきらめていますがーーー。


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