入院した在宅患者さんの病棟回診?お見舞い?

49.入院した在宅患者さんの病棟回診?お見舞い?

 訪問診察に行っている方は、入院される頻度は高いと思われます。入院したときに診療情報提供書に加え、ADL・IADL・認知症の有無や程度・住居の様子などを記したアセスメント表と、訪問時に撮影した顔と全身の写真、そして住んでいる部屋の様子などを写した写真を添えて病院に送っています(第14話)。当クリニックから訪問診察に行っている方の内、一日断面でみておおよそ20名弱の方が常時入院されています。今回はこの方たちが入院している病棟に回診に行っているお話です。

 毎週月曜日の午後に、往診医(私)といつも往診に同行する看護師、居宅療養管理指導をお願いしている薬局の薬剤師さん、居宅介護支援事業者のケアマネジャーさん、そして病院の看護師さんで病棟を回ります。病棟では、「御苦労様です、在宅回診です」と声をかけナースセンターに入ります。電子カルテをみせていただきその病棟に入院中の在宅患者さんの医療情報をチェックします。

在宅回診を始めた目的は、1.入院治療に関する在宅医としてのコメントをすること、2.「これなら後は在宅で見られますので退院でもOKですよ」というように退院の見極めをすること、3.「退院したら又訪問しますよ」と話すことで少しでも患者さんの闘病意欲が高まるようにすること、などです。入院治療に関するコメントは、当初は、回診の後に文書にして送っていたのですが力量不足で急性期治療にまで踏みいってのコメントができずすぐに中止してしまいました。急性期の治療は病棟医にお任せです。退院の見極めは、自宅で家族からの介護を受けている方の判断は、なかなかできません(家族の意向がリアルタイムには把握できないので)が、居住系施設では、介護の様子が分かっているのであとは任せてくれという感じになります。ケアの質が分かっている場所への退院の判断は比較的容易です。あまり食べられていない方でも、このまま入院していても同じことなので、居住系施設にかえしてくださいと病院の看護師に伝え退院してもらいます。居住系施設に戻ると案外食べられるようになる人が多いものです。うまくいかないときもありますがそれは病院にいても同じことなのでよしとします。一番実が上がっているのは、「退院したら又訪問しますよ」といったお見舞い的な面です。「それでいいのだ」と思っています。

病院に入った方で、肺炎や尿路感染症を繰り返し、だんだんレベルダウンし、回診し名前を呼んでも当方のことが認識できなくなってしまう場合もあります。徹底してキュアをして最後は,文字通り、矢尽き刀折れといった感じで亡くなる方も多いです。

MRSA、クロストリジウム・ディフィシル、ESBLなどに感染して回診もままならないこともあります。

障害を持った高齢者への入院医療提供にあたっては、ケア面でのマンパワーを短期集中的にかけないと廃用や生きる意欲の低下などの負のスパイラルに入る危険性が高いと思われます。医療と介護の連携ということがよく言われますが、入院の場合は連携というより共同・協同が必要と感じています。


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