在宅お花見会(2)

18.在宅お花見会(2)  (2016.4)

  奈良の東大寺のお水取りは、始まって以来1250年の間、一度も欠かさずかつ変わりなく行われていると聞くと びっくりです。お水取りを引き合いに出すのは大げさですが、当院で行っている在宅お花見会はたかだか、20年ですが大きく様変わりしました。当初は本当に 少人数でこじんまりしたものでした。その後福祉バスを借りたりして、参加人数が徐々に多くなっていきました。ピークは、2001年にあった百万石博のとき でした。クリニックを休診にして車椅子が40数台、職員や、ボランティアさんなど総勢100名ほどでお花見会を開きました。お城の中を散策した後(私に とっては30年ぶりの場内散策でした)、石川門を抜け、兼六園に入り、そして厚生年金会館に到着です。車椅子一台に2名の担当者がついての移動です。兼六 園の砂利道は車椅子にとっては難路ですが、それにもめげず徽軫(ことじ)灯籠の前の狭い石橋まで通っていきます。さすがに栄螺山へはいかず、ふもとの内橋 亭で花より団子です。そして厚生年金会館の大広間で昼食宴会です。

 看護師さんが中心の実行委員会で毎年企画を練っているのですが、その時にひとつは前年までとは違うことを企画し てくださいと話していました。・今年はガイドを頼んでみよう→ガイドがいなくてガイドブックを片手に自らがガイド嬢になるはめになる、・霞が池の前で定番 の記念写真を撮ろう→業者に頼まずデジカメで撮ったら広角でないのでうまく入らず、・霞が池に浮かんでいるように見える内橋亭で昼食をとろう→予算が足り ず利用者だけ昼食をとり、職員は弁当食べる、などなどいろいろありました。

  話が元に戻りますが、参加人数がピークだった2001年というのは、介護保険制度が始まって1年たった頃です。 その後、徐々に参加人数が少なくなってきました。通所系サービスを受ける方が増えてきて、そこからお花見に行くことが多くなったことが一番大きい理由だと 思います。訪問系サービスのみで閉じこもりの人が少なくなってきた証で喜ばしいことです。それでは在宅お花見会を今後どうするかと考えて、2006年から 小規模多希望(どっかで聞いたことがあるフレーズですね。この年から介護保険制度で小規模多機能居宅介護が始まったのです)と銘打ったお花見会をすること にしました。送迎車一台で一人の利用者を2人の職員がついて、こまわりよく、希望にはできる限り応える花見にしようとしたのです。対象は、医療依存度が高 くて(吸痰必要、経管栄養中など)通所系サービスの利用がない方としたのです。経管栄養の方が兼六園の茶店でソフトクリームをおいしそうに食べるなどびっ くりすることもありました。6名程度の参加が限度でした。

 数名から始まり、100人まで規模を大きくし、ふたたび少人数になってきたこの在宅お花見会ですが、やはり基本は、ご利用者の思いにどれだけこころを寄せられるかだなと思っています。


«……»