孫からみた在宅ケア

16.孫からみた在宅ケア             (2016.2)

 2008年5月号のこの欄に「孫のいる風景」と題して登場していただいたお孫さんの作文の紹介です。2008年5月号では「訪問診察に行くと、ドドッと孫たちがAさんの部屋に駆けつけてきます。Aさ んもうれしそうにニコニコ顔になります」と書いたのですが、その孫のひとりが小学校六年生になり金沢市の作文コンクールで優秀賞をとったのでした。Aさん は施設に入りましたが、Aさんの妻が通院されています。その受診時に何気なくBちゃんは勉強していますかと聞いたときに作文の話となりみせてもらって訳で す。

  訪問診察にいくたびに、Bちゃんに、「将来お医者さんになってね」と話していたのでした。Aさんは、歩行障害があり進行性に悪化し全くの寝たきりにな りました。妻と嫁が介護をしていたのですが、大柄な方で体位交換やおむつ交換がなかなか困難で、在宅での介護は無理ということで特別養護老人ホームにはい られたのでした。そのAさんを、病初期から現在までずっとみてきたお孫さんが、「家族を大切にすること」というタイトルで、作文を書いたのです。全文をの せたいのですが、字数の関係で部分引用になります。

 「最近ぼくは、家族のありかたについて,考えるようになりました。----ぼくの祖父は、ぼくが保育園の時は,送り迎えをしてくれていました。---ぼくは,そんな祖父のことが大好きでした。---ある時、祖父はやたらと転ぶようになりました。---あの元気なときからは,想 像が出来ないくらい弱々しく見えます。医者が家に来て祖父の様子を見、母や祖母は、一生懸命、祖父の世話をしました。---しかし、もう母や祖母の力だけ では、面倒をみきれなくなりました。そして、介護センターに行くことになりました。ぼくの気持ちとしては、祖父はずっと家にいてほしいです。---たま に、家に帰ってきて、一緒にご飯を食べます。---とても楽しいひとときです。

 本来望んだかたちではなくても、お互いに余裕のある心で家族を大切にするこ ともできるのだとその時思いました。そして、家族を大切にする気持ちは、はなれてくらしていても変わらないものだと感じました。---もちろん、元気で一 緒に仲よく暮らせることが理想ではありますが、それが出来ない理由が入ったとき、一番大切なのは、一人一人の心と体の余裕なのだと思います。そうでない と、笑顔で接し合うことが、出来なくなるのではないでしょうか。」少し、はしょりましたがBちゃんの言葉そのままです。心と体に余裕を持って介護ができる ことの重要性を、小学生が喝破しています。施設か在宅かではなく家族に過度の介護負担をかけることなく望むところで介護を受けられることが必要だというこ とをこの作文は訴えていると思います。そして訪問診察医として、家族の介護の負担感にどれくらい思いを寄せられたかなあと反省する材料にもなっています。


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